本研究は東北大学学際フロンティア研究所の領域創成研究プログラムとして採択されスタートしました。 この研究は地球外文明との初接触(ファーストコンタクト)に備え、その時の地球外文明とのコミュニケーションにおける最適戦略を探ることを目的にしたものです。しかし、コミュニケーションの相手側である地球外文明は未だ発見されていないため、そのコミュニケーションの形態がどのようなものになるかを想定する事は難しいです。そこで本研究では、われわれ地球人が未知の存在とコミュニケーションする場合におけるバイアスを、心理学的実験によりあぶり出すことを目的として設定することで、実現可能な意味のある実験を行います。 本研究では、地球外文明との交信を想定した実験系(見えない未知の存在と「2進数コミュニケーション」しかできない環境)において、地球人は「どのようなシグナルに対して知性を感じるか」「どのようなコミュニケーションに対して好感・嫌悪感を抱くか」を実験的に探ります。例えば好感・嫌悪感を感じるシグナルの傾向や、その性差・世代差・人種差などの有無が対象となります。これにより「コミュニケーションにおける『不気味の谷』の有無」など、地球人が持つコミュニケーションバイアスの有無を検証します。 本研究は、地球外生命探査という宇宙科学的な研究目的に対して、実験心理学という手法で挑む文理融合の新しい学際研究になります。
実験のセットアップとして、姿の見えない相手と、パソコンのキーを押した時だけ音が出る「2進数メッセージ」のみのやりとりによる「2進数コミュニケーション」する系を設定します。これは、地球と地球外文明との電波での遠隔コミュニケーションを模したもので、この実験系にて以下の2種類の実験を行います。 (T1) 人間性判断:被験者は「相手」が人間であるか否かを判断する。 (T2) 好意性判断:被験者は「相手」からの信号が好意的か敵対的かを判断する。 我々はこの実験を日本科学未来館の市民参加型実験(*)として実施する計画である。本年度はそれに向けての実験用アプリケーションの開発を中心に行った。 これらの実験を市民参加型サイエンスとしてオンラインや科学館等フィールドとして行うべく準備を行っています。